わたしはもともと看護師になりたくなかった。
学生時代に、母に「漫画家になりたい」と言ったら、
「それではなかなか暮らせないから、仕事を、何か持った上で趣味でやったら」と、至極まっとうなことを言われたのだ。
それで、漫画家を諦めたのだが。
かと言って看護師になりたかったわけではない。
母が看護師だったことや、高校の先輩が看護学科に行ったこと、自分の得意科目と受験のしやすさ。
「看護師なら食いっぱぐれないだろう」という、
安直な考え。
言うなれば。
夢が破れて。
「テキトーに決めた」のだと思う。
そして、「仕事」の意味もわかっていなかった。
資格さえとれば働けると思っていたし、
向き不向きがあるとか、実感がなかった。
それに、あるあるかもしれないけれど。
受験生の時は、
「進路を決める」は「学校を決める、受かる」で、
「学校に受かる」がゴールだった。
その後、その学校で何を学んで、何の仕事をするかなんて、二の次、三の次だったのだ。
その後の方が、全然大事だったのに。
当時、社会にどんな仕事があるのかも、知らなかった。
今のように、簡単に検索することも出来なかったけど。
「働く」こともわからなかった。
大人になってわかった。
世の中は、何一つ、お金なしでは動かないのだ。
子供の頃感じていた、優しさだけでまわる世界なんてなくて。
世の中、金なんだ。
お巡りさんも、お給料もらっている。
図書館も税金だ。
好きなアニメは、邪魔だと思っていたコマーシャルがあって、ただで見られていた。
自分の食事や住む家や、制服や、
実は親が働いたお金でできていたのだ。
親がそれなりに働いてくれていたので、
暮らせていたのだ。
そして、自分も働いて、稼がなければ
この世の中を生きていけない。
学費を払って、「お客様」で行く学校と、
「働かせてもらって、お給料をもらう」仕事の、
立場の違いが、そもそも違うことに。
仕事は、「もう、来なくていい」と言われる可能性があることに。
少し、バイトしてみればよかったろうか。
わたしは、社会で働いた時、ポンコツすぎて、愕然とした。
仕事がわかって、慣れてくると、ようやく他の人に見えなかったり感じられないものがわかったり、個性が出せる面もあったけど。
評価されるほどでもなかった。
これぞ、HSPなんだなというかんじだった。
数やスピード、責任を求められると、なおさら出来ないし、頭が真っ白になった。
看護の仕事は、やる事も多いし、責任も重い。
状況も仕事も変わる。
使えなかったなぁと、とても思う。
じっくり、何かを作る仕事ならよかったろうか。
自分に向く仕事に、出会えることは、
とても、幸せな事だと思う。
社会で働く多くの人は、「向いてない」仕事で頑張っている。
向いた仕事で、何十年もキャリアをつんで、退職金をもらえるのがいいだろうけど。
わたしは、看護師という「いい仕事」についたかもしれないけど。
キャリア途中で、ドロップアウトして、
その後看護師のキャリアを活かせない(活かしたくない)なら、この派遣の事務の世界では、初心者と同じ扱いになるのだ。
アラフィフにして、ほとんど事務のキャリアがない。
いい大人が、何の武器もないのだ。
条件よく、安定して働くのは、
狭き門だ。
なら、進路を選ぶ時に、パソコンを勉強したり、デザインの勉強をすればよかったと、今は思う。
仕事は今どき、ハードモードだ。
学校で、良い成績をおさめて、条件の良い会社に入って、安定して働いて。
家族を持っても安心して働いて、マイカー、マイホームを持てる人は、どれほどなのだろうか。
よくあるのは、仕事が合わないとか、
責任や仕事が多くて、残業ばかりとか、
人間関係が酷いとか、
病んでしまうとか。
環境は悪くなくても、いつまで経っても貯金できないとか。
そうして仕事をやめても、
なかなか安定したいい再就職先がないとか。
転職は、あまりうまくいかないイメージだ。
そして、なかなか結婚資金もたまらないとか。
〜少子化もするって…。
真面目な労働意欲のある人さえ、
まっとうな仕事ができない世の中。
そんなことを思うと、
学生の頃の成績の良し悪しなんて、
幸せに働けるかどうかとは、なんの関係もない。
自分に向いた仕事を、
長く勤められる方が、最終的に、得意分野で大成できるのではないか。
大卒の就職浪人なんて、たくさんいる。
成績がよいから、いい仕事につける?
給料のいい大企業だったとしても、向いてなかったら、嫌いな仕事なら、長くは頑張れないだろう。
長く頑張ったとしても、幸せなのか?
心がずっと苦しいままだったら?
向いた仕事について、長く楽しく頑張れることが、
一番なんじゃないか。
看護師やめて、事務の派遣の仕事をし始めて、
思ったことだ。
自分に向いた仕事を見つけるって、
実はすごく大事だと、最近は思う。
そして、わたしはまだ、それがわからない。
もうすぐ世に言う「定年」なる年齢が、見えてきそうなのに、だ。